慶應義塾湘南藤沢高等部の帰国生入試では、2022年度より国語に代わり「課題型小論文」が出題されるようになりました。ここではその出題傾向と解答のポイント、対策についてお伝えします。【1】過去の入試問題から見た出題傾向2023年度 商業デザインにおけるビジュアル表現の1つである写真の役割に関する文章(1200字程度)を読み、与えられた3つの写真の中から1つを選び、課題文の内容を踏まえた上でその写真を使ってどのような広告を作れるかについて500字以上600字以内で論じる。2022年度「事実とは何か?」というテーマで書かれた、約3500字の文章(A4サイズ3ページ)を読み、「女性差別なんて気にしてはいけない」という言葉の意味が、発言した人の属性(立場・世代など)によってどう変わるかについて、明らかに意味の変わる複数の実例を挙げながら500字以上600字以内で論じる。2年分の過去問題を見る限り、受験生の思考力と論理的な記述力を見る本格的な小論文を出題しています。しかも、45分で課題文を読み、内容と構成を考えで500〜600字で書き上げなくてはならないことを考えると、大学の帰国生入試にも匹敵する非常に難易度の高い小論文でと言えます。また、「課題型小論文」とあるようにテーマだけが与えられる形式ではなく、2022年度は長文の課題文、2023年度は写真というように、小論文を書くにあたって何らか素材が与えられるのが特長です。今後の予想としては、表やグラフなどの資料から情報を読み取って意見を述べるタイプの出題も考えられます。【2】解答のポイント課題文を正しく理解し、設問をよく読むどんなに素晴らしい考えや意見を書いたとしても、課題文の内容や設問から外れたものでは非常に厳しい評価しかもらえません。したがって、国語の読解問題に取り組むときと同様に丁寧に文章を読み、設問で問われていることに対する的確な意見や考えを書くことが重要となります。論理的な構成で書く小論文は自分の意見を読み手に対していかに説得力を持って述べられるかが重要です。600字程度の小論文では「導入」「意見」「まとめ」の3段落で書くのが一般的ですが、「意見」の部分では具体例を挙げながら説明するようにしましょう。漢字や送り仮名の間違いに気をつけ、正しい日本語を丁寧な字で書く慶應義塾湘南藤沢高等部の帰国生入試では、出願資格として「TOEFL iBT 70以上」「IELTS 5.5以上」「英検準一級以上」のいずれかを取得していることが求められるため、受験者の多くが英語圏の現地校生やインターナショナルスクール生だと考えられます。こうした受験生の中には日本語が苦手な子もいますが、小・中学校で習う漢字は送り仮名も含めて正しく書けなければなりません。また、「ら抜き言葉」のような文法の誤りにも気をつける必要があります。そして、普段日本語を書き慣れていない場合、読むに堪えない雑な字を書く子もいますが、下手でも構わないので丁寧な字で書くことは実はとても重要です。【3】合格に向けた対策45分という短い時間で600字もの文章を書くには、日頃からトレーニングが必要です。特に現地校やインターナショナルスクールの生徒は、日頃からコンピュータを使っての文書作成に慣れているため、鉛筆で原稿用紙に書くことに慣れておきましょう。丁寧な字で600字を書くのにどのくらいの時間がかかるのかを知っておかないと、制限時間内に書き上がらないという大きな失敗をしてしまう可能性があります。また、慶應義塾湘南藤沢高等部の帰国生入試では、過去に国語の筆記試験の中で社会問題をテーマに100〜200字で意見を書かせる記述問題を繰り返し出題していました。したがって、今後の「課題型小論文」でもこうしたテーマが出題される可能性が大いにあります。日頃からテレビやWebなどのニュースに目を通し、世の中のさまざまな分野の出来事に関心を持つことが重要です。最後に、小論文は自学自習がもっとも難しい教科の1つと言えます。そこで、自分の書いた小論文の何が問題で、どうすればもっと良くなるのかを的確に指摘してくれる添削指導を活用するのが上達の近道と言えます。